電脳文字対話 9
私:しかし今回の久間防衛大臣の「日本に原爆が落とされたのはしょうがなかった」という発言には驚いたね。
彼 :それはそうだけど、俺はその暴言を吐いた大臣をかばう安倍首相にもあきれたね。被爆国の閣僚が取り返しのつかない暴言を吐いたというのにかばうかね、やっぱり近づいている参院選挙の方が大事なんだろうか。
私:久間大臣は、以前ぼくがエッセイで取り上げた「はにかめる栗鼠」の典型例だろうね。自虐癖もここまでくればもはや手のつけようがない。アメリカによる日本への原爆投下の意味については、次の村上陽一郎の言葉をまずよく咀嚼してもらいたい。
《私たちは、アメリカが、事前に明確な警告も与えず、ほとんど戦力を失っていた日本に原爆を投下した、それも非戦闘員の都市である広島に続いて、三日の余裕しかおかずに長崎にも投下したことで、アメリカに対して強い批判を持っている。二つの爆弾は性質の異なるものだったから、そこには一種の「実験」が内包されていたことは明らかで、そのような実験が、白色人種ではない日本人を相手に行われたことにも、意味があることを指摘しなければならない》(村上陽一郎『科学者とは何か』126頁)
つまり、アメリカは、戦況が悪化し疲弊しきっていた日本の中の、非戦闘員の住む町に、事前の通告なしに、性質の異なる二種類の原爆を連続して投下したのであって、仮に、(安倍首相がご丁寧に擁護していたように)、アメリカ側の立場に立って物をいったとしても、「しょうがなかった」と言える行為でなかったことはたしかだ。アメリカは、戦争を利用して、黄色人種を大量殺戮して核兵器の人体実験をしていたんだよ。全く擁護のしようのない極悪非道な行為だったんだよ。
彼 :君のように今回の発言に激昂している人たちはたくさんいるだろうから、こうなってくると、参院選の予想においてもともと劣勢だった自民党は、ますます窮地に追いこまれたといえるだろうね。
私 :というより、ぼくはそもそも自民党に投票しようとしている人たちの気がしれないね。こんなに長い間、政権を握って官僚と企業と癒着して国民を搾取し続けてきている党に、そして安倍政権になってからは野党を無視して次々と法案を強行採決し続けているこの独裁的な党に、投票しようとしている人が、癒着の恩恵に与っている人以外にいるとはどうしても思えないんだけど。
彼 :まあ、与党はマスコミや御用学者をうまく利用している面もあるからね。
私 :そうだね、ラジオはともかく、地上波のテレビでは、与党をあからさまに批判する人士が極端に少なくなってしまったね。ぼくは昔は久米宏はそんなに好きじゃなかったんだけど、最近、つくづく彼のような存在も必要だと思うね。
彼 :国民を代表して政権批判をしてくれるジャーナリストの存在か。久米さんは今、TBSラジオの「久米宏 ラジオなんですけど」という番組でパーソナリティをしているだろう。
私:うん、これがなかなかいい番組で、この間、ギャラクシー賞のラジオ部門DJパーソナリティー賞を受賞したみたい。懐かしの久米節を聴くことが出来て、楽しいよ。
彼:俺もその番組はよく聴いているんだが、番組の冒頭がいつもスタジオではなく、どこか屋外での中継から始まるんだよな。で、小島慶子が喋っている間に久米さんはスタジオに戻ってくるんだが、あれは、久米さんが前の番組担当の永六輔と会いたくないからなのかな、と毎回思ってしまうのは俺だけだろうか。
私 :君だけだろうね(笑)
彼 :そういえば、岩波書店から時枝誠記の『国語学原論』の文庫版が出たね。君は手に入れたかい?
私 :ぼくは図書館で借りて見たんだけど、あのいかにも「学術書でござい」といった体裁の本が、あんなに手軽に読めるようになったことはいいことだと思うよ。ただし、下巻の最後に掲載されている前田英樹による解説はいただけないね。彼は、時枝がヨーロッパの言語学のような「構成主義的」態度を排して、言語を主体による言語活動をも含め総体的・動的に捉えようとしたことや、伝統的国語研究を発展させた時枝の斬新な詞辞論を評価しつつも、最後の方で、《時枝の言語過程説は、ヨーロッパの近代言語学に正面から対峙することを強いられた者が、魂の総力を挙げて展開したこの言霊学ではなかったか》(307頁)と、最終的に時枝の学説を「言霊学」と総括し、トンデモ学扱いしてしまっている。ぼくが解説者であれば、時枝誠記の言語学者として本質的に優れているところをまずあげて、それから具体的な各論では今日の学的水準からすると訂正すべき点もあるという書き方(その中には、彼の詞辞論や表現論における言霊信仰的な傾向も含まれるであろう)をするけどね。
彼 :でもまあ、前田英樹は、無責任な時枝批判者のように、時枝を国粋主義者扱いしていないから、その点は評価してあげてもいいんじゃないの?
私 :まあ、その点はそうだね。でも、あと時枝の立場論や三浦つとむの継承について一言もふれていない点は、やっぱり不満だね。
彼 :なんにしてもまあ、われら時枝フリークとしては、『原論』の安価版が出て、時枝理論が世に広まることは喜ばしいことではあるね。
ところで、ずいぶん久しぶりだけど、私生活で何か変わったことはあるかい?
私:そうだね、長女が産れたことくらいかな。
彼 :そりゃおめでとう。知らなかったよ。3歳の長男の方は元気かい?
私 :元気すぎて困ってる。最近、お笑い芸人の真似をして、「欧米か! 欧米か!」といってぼくの頭を叩いてくるんだ。まったくテレビの影響は困ったもんだ。
彼 :欧米崇拝論者の悪口ばかりいってたから天誅が下ったか(笑)
(2007年7月2日記す 2026年4月6日再掲)
彼 :それはそうだけど、俺はその暴言を吐いた大臣をかばう安倍首相にもあきれたね。被爆国の閣僚が取り返しのつかない暴言を吐いたというのにかばうかね、やっぱり近づいている参院選挙の方が大事なんだろうか。
私:久間大臣は、以前ぼくがエッセイで取り上げた「はにかめる栗鼠」の典型例だろうね。自虐癖もここまでくればもはや手のつけようがない。アメリカによる日本への原爆投下の意味については、次の村上陽一郎の言葉をまずよく咀嚼してもらいたい。
《私たちは、アメリカが、事前に明確な警告も与えず、ほとんど戦力を失っていた日本に原爆を投下した、それも非戦闘員の都市である広島に続いて、三日の余裕しかおかずに長崎にも投下したことで、アメリカに対して強い批判を持っている。二つの爆弾は性質の異なるものだったから、そこには一種の「実験」が内包されていたことは明らかで、そのような実験が、白色人種ではない日本人を相手に行われたことにも、意味があることを指摘しなければならない》(村上陽一郎『科学者とは何か』126頁)
つまり、アメリカは、戦況が悪化し疲弊しきっていた日本の中の、非戦闘員の住む町に、事前の通告なしに、性質の異なる二種類の原爆を連続して投下したのであって、仮に、(安倍首相がご丁寧に擁護していたように)、アメリカ側の立場に立って物をいったとしても、「しょうがなかった」と言える行為でなかったことはたしかだ。アメリカは、戦争を利用して、黄色人種を大量殺戮して核兵器の人体実験をしていたんだよ。全く擁護のしようのない極悪非道な行為だったんだよ。
彼 :君のように今回の発言に激昂している人たちはたくさんいるだろうから、こうなってくると、参院選の予想においてもともと劣勢だった自民党は、ますます窮地に追いこまれたといえるだろうね。
私 :というより、ぼくはそもそも自民党に投票しようとしている人たちの気がしれないね。こんなに長い間、政権を握って官僚と企業と癒着して国民を搾取し続けてきている党に、そして安倍政権になってからは野党を無視して次々と法案を強行採決し続けているこの独裁的な党に、投票しようとしている人が、癒着の恩恵に与っている人以外にいるとはどうしても思えないんだけど。
彼 :まあ、与党はマスコミや御用学者をうまく利用している面もあるからね。
私 :そうだね、ラジオはともかく、地上波のテレビでは、与党をあからさまに批判する人士が極端に少なくなってしまったね。ぼくは昔は久米宏はそんなに好きじゃなかったんだけど、最近、つくづく彼のような存在も必要だと思うね。
彼 :国民を代表して政権批判をしてくれるジャーナリストの存在か。久米さんは今、TBSラジオの「久米宏 ラジオなんですけど」という番組でパーソナリティをしているだろう。
私:うん、これがなかなかいい番組で、この間、ギャラクシー賞のラジオ部門DJパーソナリティー賞を受賞したみたい。懐かしの久米節を聴くことが出来て、楽しいよ。
彼:俺もその番組はよく聴いているんだが、番組の冒頭がいつもスタジオではなく、どこか屋外での中継から始まるんだよな。で、小島慶子が喋っている間に久米さんはスタジオに戻ってくるんだが、あれは、久米さんが前の番組担当の永六輔と会いたくないからなのかな、と毎回思ってしまうのは俺だけだろうか。
私 :君だけだろうね(笑)
彼 :そういえば、岩波書店から時枝誠記の『国語学原論』の文庫版が出たね。君は手に入れたかい?
私 :ぼくは図書館で借りて見たんだけど、あのいかにも「学術書でござい」といった体裁の本が、あんなに手軽に読めるようになったことはいいことだと思うよ。ただし、下巻の最後に掲載されている前田英樹による解説はいただけないね。彼は、時枝がヨーロッパの言語学のような「構成主義的」態度を排して、言語を主体による言語活動をも含め総体的・動的に捉えようとしたことや、伝統的国語研究を発展させた時枝の斬新な詞辞論を評価しつつも、最後の方で、《時枝の言語過程説は、ヨーロッパの近代言語学に正面から対峙することを強いられた者が、魂の総力を挙げて展開したこの言霊学ではなかったか》(307頁)と、最終的に時枝の学説を「言霊学」と総括し、トンデモ学扱いしてしまっている。ぼくが解説者であれば、時枝誠記の言語学者として本質的に優れているところをまずあげて、それから具体的な各論では今日の学的水準からすると訂正すべき点もあるという書き方(その中には、彼の詞辞論や表現論における言霊信仰的な傾向も含まれるであろう)をするけどね。
彼 :でもまあ、前田英樹は、無責任な時枝批判者のように、時枝を国粋主義者扱いしていないから、その点は評価してあげてもいいんじゃないの?
私 :まあ、その点はそうだね。でも、あと時枝の立場論や三浦つとむの継承について一言もふれていない点は、やっぱり不満だね。
彼 :なんにしてもまあ、われら時枝フリークとしては、『原論』の安価版が出て、時枝理論が世に広まることは喜ばしいことではあるね。
ところで、ずいぶん久しぶりだけど、私生活で何か変わったことはあるかい?
私:そうだね、長女が産れたことくらいかな。
彼 :そりゃおめでとう。知らなかったよ。3歳の長男の方は元気かい?
私 :元気すぎて困ってる。最近、お笑い芸人の真似をして、「欧米か! 欧米か!」といってぼくの頭を叩いてくるんだ。まったくテレビの影響は困ったもんだ。
彼 :欧米崇拝論者の悪口ばかりいってたから天誅が下ったか(笑)
(2007年7月2日記す 2026年4月6日再掲)