電脳文字対話 12(米軍機の飛行再開について)

(2018年2月2日衆議院予算委員会質疑にて、小野寺防衛大臣の答弁)

『 昨年10月11日に発生した米海兵隊のCH53―Eヘリの事故につきましては、地元の皆さんの不安の声や事案の重大性をふまえ、私から飛行停止を申し入れ、実際に米軍は同型ヘリの飛行を停止させました。さらに米側は96時間飛行停止をおこなう旨公表しましたが、日本側の要請もふまえ、実際には約1週間かけて安全確認をおこなうなど、米側には一定の配慮がみられたところです。他方、安全性に関する米側の判断の根拠についての説明が十分とはいえない状況のなかで、10月18日にCH53―Eの飛行が再開されたことは、誠に遺憾であり、引き続き安全性に関する米側の判断の根拠について、説明を求めてきました。その際、専門的知見を有する自衛官を現地に派遣し、事故現場の状況を確認するとともに、安全性に関する米側の判断の根拠等について確認をしたところでございます。具体的には、米側の初期調査において、飛行中のエンジン火災がCH―53Eの機体の構造上の不具合に起因するものであったと判断する材料はなかったということ。日本にあるCH53―E全機について、エンジン火災に関係するエンジン本体、燃料系統等について、徹底的な安全点検が行われたこと。全搭乗員、整備員に対するマニュアル等の再教育、安全に関するブリーフィング等が実施され、内部規則で定める技能基準が満たされていることが確認されたこと、などを確認し、防衛省として、米軍がCH53―Eの飛行を再開するまでに飛行の安全を確認するための一定の合理的な措置が取られたと判断するに至り、その旨の公表をいたしました。私も12月25日に事故現場に行き、被害にあわれた牧草地の所有者の方にご意見をうかがいました。防衛省としては、適切な補償をおこなえるよう被害の実態調査や日米間の協議を進めて参ります。このようなことに関して、私どもとして、米側に対して、あらゆるレベルで申し入れをおこなっております。私からは、マティス長官に対して、昨年来、毎月のように事故が起きているということをお話ししました。マティス長官からは、謝罪の言葉がありました。また、安倍総理から、トランプ大統領に対して在日米軍の運用に対しては、安全の確保が大前提であるという我が国の立場をしっかり伝えたところであると思います。防衛省としては引き続き、米側に安全を求めてまいります』(太字――引用者)


:防衛大臣が長々としゃべっているけれども、これはきみ、どういう質問に対しての答弁かわかるかい?

:よくわからないけど、2017年10月11日に沖縄の東村(ひがしそん)で不時着炎上した米軍ヘリCH53―Eを含め、近年多発している米軍機の事故についての質問なのはまちがいないだろうね。

:まあおおざっぱにいうとそうなんだけど、質問をした立憲民主党の阿部知子議員は、10月11日のCH53―Eの事案に関して、飛行差し止めになっていた同型機が日本側に一切何も報告することなしに、10月18日に勝手に米軍側の意向だけで飛行を再開したことについて、①事故事案に関する日米間の話し合いは、どこで話し合いが行われているのか。②また、どのような話し合いが行われているのか。この二点について、質問したんだよ。

:すると、まず①についてはまったく答えてないよね。まさか「専門的知見を有する自衛官」が現地で米側と話し合いするわけでもあるまいし。というか、そもそもそのレベルで話し合いをしても意味がない。どこか分からない場所で、たぶん電話だろうけど、大臣がマティス長官と話し合った、としか言っていない。②についても、少なくとも、「なぜ、米軍機が日本側へ報告することなしに勝手に飛行を再開したのか?」については答えてないよね。「安全性が確認されたから」では不十分だろう。日本側への報告がないことについての理由が説明されていないのだから。

:そのとおり。小野寺大臣は、10月18日に米軍機が飛行を再開したことについて、『誠に遺憾であり、引き続き安全性に関する米側の判断の根拠について、説明を求めてきました』というけれども、その前にするべきことがあるだろう。

:断固とした抗議だな。

:そう。大臣は12月25日にはじめて事故現場に行くことになるが、少なくとも日本がまともな主権国家であるならば、10月18日に米軍機が飛行再開した時すぐに大臣が現地に乗り込んでまず抗議をしていなければおかしい。まず最初に「なぜ約束を破るのか!」と怒らなければおかしいだろう。なのに、「まことに残念です。飛行再開の判断の根拠を教えてくれませんか。」としか言ってない。

:それは昨年12月に発生した普天間第二小学校米軍ヘリ窓落下事件にも同じことが言える。米軍側は「普天間第二小学校を含むすべての学校の上空の飛行を最大限可能なかぎり避けるよう指示した」と言っているにもかかわらず、翌年1月18日に同小学校の上空を再び低空飛行している。ここから先は俺の憶測だけど、この同じ「18日」ということにも意味がありそうだな。米軍は日本人をおちょくってわざと確信犯的に同じ日にやってそうだよな。

:そもそも小学校の上の低空飛行を「最大限可能なかぎり避ける」という指示自体、主権国家をばかにしているものといえるだろう。この表現は、いいかえれば、「たまには飛ぶよ」ということを意味している。

 どこの世界に、小学校の上を外国の軍用機が低空飛行することを容認している国があるのか?



:日本以外にまずないだろうね。



:阿部知子議員は、上の大臣の答弁の後、まともな話し合いがおこなわれていないからこのような米軍の異常な行動が起きるのではないか、として、再びどこで話し合いがおこなわれているのか、と聞いたところ、小野寺大臣は「マティス長官と大臣レベルで話し合いをしている」と答え、河野外務大臣は「さまざまなチャネルで話し合いをしている」と答えた。どちらも明らかにはぐらかした答弁でしかない。なかなか「日米合同委員会」という言葉が出てこないので、阿部議員は業を煮やして自分からその言葉を口にすることになるんだけど、以下、そのやり取りの抜粋だ。

阿部:認識の違いについては、どこで話し合いが行われているのか? たとえば日米合同委員会で議題にあがってきているのですか?

河野:日米合同委員会を含むさまざまなチャネルで日ごろ調整をしているところでございます。

阿部:日米合同委員会の内容はいっさい国民に対して明らかになっていない。国民から信頼がえられるわけがありません。沖縄県民から信頼がえられるわけがありません。
日米合同委員会の内容の公表についてどう考えるか。また、日米合同委員会に地元自治体を話し合いに参加させるべきではないか。

河野:日米間の忌憚のない意見の交換や協議を確保するために、日米合同委員会やその下部での合意事項議事録については、日米双方の同意がなければ公表されないというのが政府の方針でございます。

阿部:そうやって公表しないから、よけい国民の不信を招き、日米関係は悪化するのではないか 』


:まったく阿部議員のいうとおりだな。密室で国民の生活に重大な影響を及ぼすことが次々と決められていっているわけか。ちなみに河野大臣は、日米合同委員会に地元自治体の人を何らかのかたちで参加させる仕組みの導入についての質問にはまったく答えていないね。ドイツでは義務化されていることなんだけどね。

:そのとおり。ようするに、阿部議員の質問に対する答えとしては、話し合いは日米合同委員会でおこなわれており、その内容は非公表だ、ということになるだろう。おそらく、日米合同委員会では、米軍側は、「基地権密約により、行政協定時代の基地権の内容が今も生きている」と主張し、「われわれが日本側の飛行差し止め要求に応じる法的義務はいっさいない」と答えて終わりだろう。そして、こんなひどい話し合いの内容を日本国民に公開するわけにいかないので、河野外務大臣は「日米双方の合意がなければ公表されないというのが政府方針」といって逃げているのだろう。

「それぞれの米軍基地についての基本合意に加え、地域の主権と利益を侵害する数多くの補足的な取り決めが存在する」
「すべてが米軍の決定によって、日本国内で大規模な演習がおこなわれ、砲弾の発射訓練が実施され、軍用機が飛びまわり、その他、非常に重要な軍事活動が日常的におこなわれている。それらの決定は、行政協定によって確立した[アメリカの]基地権にもとづいている」
(「在日米軍基地に関する極秘報告書」ホーシー公使作成。矢部宏治著『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』【集英社インターナショナル】より)(太字――引用者)

 今の日本も、基本的にはこれと同じ奴隷国家状態にあることはまちがいない。逆に、そう考えると、「いいよっていう前に飛んでしまう。小学校の上を飛ばないといっているのに、飛ぶ」(阿部議員)ことが、彼ら(米軍側)にしてみれば当たり前であることがよくわかる。

:しかし、戦後何年たっているんだ? もうこうなってくると、これまでしっかりとした主権回復のための交渉をしてこなかった日本の政治家、官僚の無能さが際立つよな。フィリピンや台湾など米軍から主権を回復した国々から何か学んだほうがいいんじゃないかな。

:そうだね。かつて中村光夫は、あとから近代化した国々のほうが自分たちの中の大事なものを失わずにすむということがあるかもしれない、ということを述べたけれども、まさにそうなっている感じがするね。日本は「主権」という大事なものを失ってしまっている。日本はこのままでは永久奴隷国家状態になるしかないだろうね。





(2018年2月9日記す  2026年4月10日更新、再掲)

2026年04月10日