電脳文字対話 17(感染力が高いのは発症前)

: やあ、久しぶり。相変わらずパンデミックは続いているけど、日本の専門家会議もようやくPCR検査の拡充の必要性を訴えかけるようになったね。

: 4月22日の「提言」の話だね。自治体の長が地域における「実務リーダー」を決めて、そのリーダーのリーダーシップのもと、PCR検査の拡充や医療機関の役割分担の促進、保健所体制の強化などの対策を迅速に進めるというものだね。PCR検査については、「医師の判断により、必要な者に迅速に実施されることが重要」と述べられている。

: 遅きに失した感はあるけど、いいことじゃないか。

: ところがどうもまだ心配な材料があるんだ。4月15日アメリカの医学誌『ネイチャー・メディシン』に掲載されたエリック・ラウ氏(香港大学)らが主導した研究チームによる論文によると、新型コロナの感染可能期間(感染者が他者に感染させることが可能な期間)について、《感染力が高い状態は症状が表れる2〜3日前に始まり、0.7日前にピークに達すると推察された》とある。潜伏期間は最大で14日間、平均で5.8日間とされる。つまり、平均的な潜伏期間(5.8日間)で言うと、感染したのち、4〜5日後が1番感染力が高いことになる(そしてそれは発症の直前である)。また、感染力の高い期間は、感染した日から2日後〜6日後ということになる(つまり発症の前2〜3日から直前)。先ほどの「医師の判断」後というPCR検査の基準では、これらの感染力の高い期間に検査を受けられないということになる。なぜなら、感染力が一番高い期間というのは、症状が表れる前なのだから、医師がPCR検査を受けるよう薦める可能性は低くならざるをえないというわけだ。

: それは大問題だね。医師の判断後に検査を受けさせたとしても、その前にたくさん感染させてしまっている可能性があるというわけだ。それこそ医療崩壊につながる可能性がある。

: そう。だから、本来ならば、無症状の人もどんどん検査させるべきなんだよ。なぜ、医師の許可が必要なんだろう?

: そりゃ、日本の場合、人手や検査キットが足りないみたいだよ。

: だったら、それを大々的に公表して、人手は何人、検査キットは何個足りません、ドライブスルー検査はこれだけ導入しましょうなどと、早急に政府に具体的な要望を出すべきではないのだろうか。

: たしかに。それこそ「実務リーダー」とやらにそういう柔軟な対応をしてもらいたいところだね。

: きのう亡くなった女優の岡江久美子さんなんかも発熱したときにすぐにPCR検査を受けていれば、3日ほど早く陽性の判断ができていたはずだし、もしかしたら助かったかもしれない。ただ、一方で医療の現場が人や物資が足りず大変な状況になっていることも分かる、だから各地域で早く「実務リーダー」を決めて、医療体制、検査体制の充実を促進して行っていただきたいところだね。

: そしてそれに対して政府やわれわれ国民も協力していかねばならないだろうね。

: もちろん。

: 君が毎日見てるテレ朝のモーニングショーは最近どうだい? 田崎史郎氏はまだ出ているのかい?

: いや、さすがに相手が悪いと思ったのか最近は出てないね。玉川さんはきのう、専門家会議はPCR検査を絞る政策から検査拡充へと方針転換したのなら、その理由の説明するべきだと相変わらず真っ当なことを言っていたよ。われわれ国民も、理由を説明してもらうことで納得することができ、さらに協力しやすくなるだろうしね。また、岡田晴恵教授の鋭い指摘も健在で、きのうも、緊急事態宣言から2週間経った東京都の感染者数について、北大の西浦教授が「増加というものが鈍化している」と述べたことに関して、「検査数が少なくて基礎データ上の問題があり、(鈍化しているかどうか自分は)評価できない。陽性率が分からない。エビデンスがほしい」という旨の指摘をされていた。

: 政府や専門家会議に対して一定の距離を置き、ニュートラルな立場を堅持してくれる番組はやっぱり必要だね。

: そうだね。ぼくはかつて、戦中朝鮮において朝鮮総督府の国語常用運動というものと対峙した、国語学者の時枝誠記の当時の戦いについて調べたことがあるんだけど、もう本当にニュートラルなメディアというものが一切ない中で孤独に戦い続けるということがどれほど大変なことか、思い知らされた気がするよ(『 言語過程説の研究』第5章)。モーニングショーは、ちょっと前に政府から名指しで批判されたりしたけど、ぼくらはそういうとき、しっかり議論の中身を吟味して、言うべきことは言ったほうがいいだろうね。政府の圧力で番組を潰してはならない。最近は政府に雇われたらしいネット民もいるようだしね。

: 時枝さんは戦中朝鮮において総督府と対立して、一時期奥さんに「大学をやめて、京都あたりで飲み屋をやろうと思う」とまで言ってたらしいね。

: よく知っているね。結局彼はその5年後に東大教授として帰国するまで朝鮮にいることになるんだけど、このエピソードは肩書きなんてどうでもいいという彼の学者魂を物語っているよね。

: そういえば有名人の訃報といえば、最近、映画監督の大林宣彦さんが亡くなったね。

: ああ、コロナ関連ではないけどね。ぼくは91年発表の『ふたり』という映画が大好きだった。バブル崩壊とともに失われていった独特の日本的情緒が作品を通して感じられるところや、作中の歌(草の想い)、主演の石田ひかり(※現在、子育ても一段落して俳優業に復帰されています。2026年4月現在放映中の『鬼女の棲む家』も面白いですね)、どれも好きでビデオを買ったほどだった。

: これからまだ観てない映画も観てみたいものだね。

: このあとのコロナ休暇、あえてそういう時間を作って、リラックスして、ストレスを解消しようではないか。

: 俺は別にストレスないよ。

: それはそれでお花畑すぎるだろう(笑)。




(2020年4月24日記す  2026年4月16日更新、再掲)

2026年04月16日