災い転じて福となす

 

 先日、二十歳の息子がバイクに乗っていた時、ヘルメットの中に蜂が入ってきて首を刺された。その日、息子はみなとみらいで私と娘(つまり妹)と食事をすることになっていた。私は娘と一緒にショッピングモールのMARK ISにいたが、息子からのLINEに蜂に刺されて「激痛!」と書かれていたので、「病院行くか?」と返信するも、しばらくすると「到着した」と返事がきた。大丈夫かと思い息子ののどを見てみると、ちょっと赤くなっているだけで大きく腫れてはおらず、針も見えなかった。とりあえず食事をすることにした。

 食事の間、スマホで調べてみると、すぐに症状が出なくても発疹や吐き気などショック症状が出てしまうことがあるとのこと。私は心配になって、食後、ドラッグストアへ行って蜂についてくわしいらしい薬剤師の方に相談してみた。まずはポイズンリムーバー(毒吸引器)という器具を使って毒抜きをして、患部をよく洗うのが望ましいとのこと。私はひとまず塗り薬を買い、MARK ISの中で娘と手分けして山や登山用の品物を売っている店を探しに行った。動きの機敏な娘がすぐに探し出してくれた。そこでポイズンリムーバーを買い、息子の患部の毒抜きをし、トイレで水洗いさせた。

 そのときは息子も「痛みはだいぶ引いた」と言っていて、そこでやっと少し安堵した。思わぬアクシデントだったが、久しぶりに親子三人、一緒に何かを成し遂げた気分、特別な体験を味わった気分になった。まさに「災い転じて福となす」といったところか。

 それにしても、都会の高層ビル群の中でポイズンリムーバーを探して右往左往することになるとは。私たちがどんなに進歩しようとも、自然の脅威を免れることなど到底できはしないと、あらためて思わされた体験であった。



(2024年7月12日)





2024年07月12日