大橋穣二氏の「事象部」と「判断部」

 時枝誠記は自らの詞辞論を背景にして、文における接続関係を独自に意味的に考察した。「私」(詞)+「は」(辞)のような連結の関係を「加算法的」であるとし、「怪しま」(詞)+「る」(詞)のような連結の関係を「乗算的」であるとした(「文の解釈上より見た助詞助動詞」【1937年3月】)。

 その後、詞(客体的表現)に辞(主体的表現)が連結して加わった関係を「添加関係」とよび、詞(客体的表現)同士が連結して、「下の語」が「上の語」を統合してまとまった内容を形成している関係を「統合関係」とよび、それらを「入子型統合形式」によって図解化した(「語の形式的接続と意味的接続」【1937年8月】)。


 今回、大橋(穣二)氏は、独自に接続関係の意味的な考察を行い、観念的自己分裂という観点も含めて、文を意味的に解析して図解化した。それに伴い必然的に分類されたのが、「事象部」と「判断部」である(『英文構造マンダラ』)。私たちは図解の「事象部」と「判断部」の関係を丹念にひもといていくことによって、時枝や三浦の「入子型構造形式」以上に、語の接続関係と意味的関係とを同時に、分かりやすく、しかも総合的に理解することができるであろう。





(2025年4月22日)

2025年04月22日