私 : やあ、久しぶり。
彼 : ほんと久しぶりだね。君は何をしていたんだい?
私 : まじめに働いているよ。
彼 : 労働者階級の鑑だな、と言ってやりたいけど、日本政府から見たら恐らく君は反日分子だろうね。
私 : そんなことは分かっている。だが、今の安倍政権のやっていることを見たら、実際はどっちが反日分子か分かったもんじゃない。
彼 : そうだね、沖縄の県民投票で70%以上の県民が反対票を投じた翌日に辺野古に土砂を投入してみせるような政権だからね。
私 : ところで、僕はテレビよりもラジオが好きで、特にTBSラジオをよく聴いてるんだけれども、去年の番組大幅改編のせいで面白い番組が減っちゃってね、最近はつまらないよ。
彼 : というと、君もやっぱり「強啓派」のひとりか?
私 : そうだね、平日夕方にやってた『荒川強啓 デイ・キャッチ』は、日々の社会の出来事やニュース、あるいは世界の流れ、社会問題などを理解するのにきわめて有用な番組だったからね。まあ久米宏や荻上チキの番組はまだあるけどね。
彼 : 俺は特に宮台真司や青木理などの日替わりコメンテーターたちによる歯に衣着せぬ発言が好きだったんだけどな。
私 : たしかに、僕も宮台さんの「クソ〜」とか「ウヨ豚」といった過激な発言を含みつつも言ってる内容はマトモという、あの絶妙にバランスのとれたスタンスが好きだったんだけどね、それももう聴けなくなって寂しいね。
彼 : 今はなに、『ACTION』って番組だっけ? 申し訳ないけど、少なくとも俺にとっては本当にどうでもいい内容ばかりで聴く気にならないんだよね。
私 : たしかに、国会でマトモな審議も経ずに悪法が通ろうしているまさにそのときに、ワチャワチャ騒いでばかりのメディアっていう状況は、まさに法華経の説話「火宅」を想起させるよね。国民にとって死活の問題を含む重要な国会論戦の行われている日に、そのことを濃密に紹介したり、批判的に論及してくれる番組というものは、今では22時の荻上チキの番組まで待たなければならない(金曜ACTIONの武田砂鉄さんは例外)。
彼 : お年寄りはもう寝る時間だよ! TBSラジオでのこれら一連の流れは、以前文化放送で政権に批判的な吉田照美が帯の番組を外されたことと似てると思うんだけど、TBSラジオの上層部の意図は何なの?
私 : 一応、TBSラジオの社長は、「新しいリスナー獲得のために!」という旗印のもと、番組全体の若返りを図りたいと言っているね。あと、元号が変わるんだし番組も変わらなければ、とも言ってるらしい。
彼 : それって、「派遣労働サギ」と同じような論理でないの? かつて竹中平蔵や日本政府は、「多様な働き方を!」という旗印のもと、派遣法を改正して不安定な働き方をせざるをえない人びとを大幅に増やすという彼らにとっての「実利」を獲得したけれど、TBSラジオも「新しいリスナー獲得のために!」という旗印のもと、自らの最大の魅力である報道路線を捨て、日本政府(=アメリカ)にとって都合の良い3S政策に加担してみせる、という側面があるんじゃないの?
ようするに権力者に対する忖度なのかもしれない。
私 : そうなのかもね。少なくとも、伊集院光のいうように、聴取率が良い番組をいきなり終わらせるというのは不自然だよね。ある意味リスナー軽視だしね。
彼 : 地上波のテレビはどう?
私 : ワイドショー番組で言えば、『スッキリ』ではモーリー・ロバートソン、『モーニングショー』では玉川徹、『グッとラック!』ではせやろがいおじさん、がいることで、なんとか報道性を担保している状態だと思うよ。特に玉川さんは自分のコーナーに山本太郎や藤井聡先生を呼んだりして、幅広い意見を聞こうという心構えが素晴らしいよね。
彼 : なるほどね。まあでも、地上波のテレビはほぼほぼダメだと思うよ。
私 : 君までそんな表現を使うのかい? 最近この「ほぼほぼ」という表現は市民権を得てきたようだけど。
彼 : 俺も紳士なビジネスマンらしき人がこの言葉を使っているのを初めて聞いたときは素直に驚いたのを今でも覚えている。でも、そこからこの表現が一般的に市民権を獲得するまでのスピードは恐るべきものがあったね。ああ、そういえば、三浦つとむの理論で言うと、この表現はどうなるんだい?
私 : これはいわゆる〈副詞〉の「ほぼ」を使った重畳表現で、意味としては、「ほぼ全部」とか「おおよそすべて」といった意味で使われており、三浦つとむの理論として正確に言えば、〈副辞〉に該当するものだね(三浦つとむ『日本語はどういう言語か』講談社学術文庫版182頁)。山田孝雄のいう〈陳述副詞〉であり、学校文法でいう〈叙述副詞〉に当たるものだね。
彼 : ああ、いわゆる〈副詞〉的表現の主体的表現バージョンともいうべきものだね。ところで、以前君が取り上げてた新しい表現としての「奥さん」(自分の配偶者をさしていう言葉)はどうだい?
かなり定着してきたんじゃないだろうか?
私 : ほぼほぼ定着しちゃったね(笑)。
彼 : もう少し君には物分かりの悪さを期待してたんだけどね。まあ、こうして俺たちも年をとっていくわけだよ(笑)。
(2020-02-09 脱稿)